【書評】迷信や風習のルーツとは?「知れば恐ろしい日本人の風習 著:千葉公慈)河出文庫」

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みなさんも子どものころに大人から聞かされたことでしょう。

「夜に口笛を吹いちゃだめだよ」「夜に爪を切っちゃだめ」

例えば、日中に「爪を切る」なんてことは忙しい現代人には難しいことです。寝る前やお風呂あがりに爪を切るという方も多いのではないでしょうか。僕の職場では日中に自分の席で爪を切っている方がいます、、、それはちょっと、まぁどうなんでしょうかね。

また、本書では記述がありませんが、迷信ということでは「霊柩車が通るときは親指を隠す」なんてのもよく言われるものですね。もしかしたら、若い人は聞いたことがない人もいるかもしれませんね。この迷信は霊柩車は遺体を運ぶということで「穢(けが)れ」があるわけですね。そして、爪、特に親指は霊魂が宿るとか神聖なものと言われています。

なので「穢れ」から親指を守る必要がある、という説があります。

また、後々の解釈では「死」から親指=親を隠すため、と意味付けされるようになったため、親指を隠している人が多いのでしょう。

そのような「穢れ」を避ける文化、「死」への恐怖から様々な風習が生まれることになったのです。

そもそも「感情」自体がより本能的なものであり、「理性」や「知性」よりも素早く脳は反応し、伝達することができるのは、生存に対する欲求が主に本能によって支えられてきたことを指している。その意味で感情の発達、とりわけ恐怖に対する感性は、自分の命を危険にさらす敵を瞬時に見抜き、身を守るためには不可欠な存在として、あらゆる生命のリスクを回避してきた、いわば”安全装置”でもあった。(P.5 まえがきより)

生命のリスクを避けるための恐怖、そしてその恐怖を呼び起こすものとして風習が築かれたのです。

本書では、多くの人が耳にしたことのある風習や、年中行事、しきたりに関するルーツや現在まで伝えられる隠された謎が考察されています。

その中から特に多くの人が聞いたことのある風習や迷信、誰もが関わる行事をご紹介します。

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夜の口笛は神聖な行為

「夜に口笛を吹いてはいけない」という迷信には地方によって諸説あるようで、僕は「蛇が出るからダメだ」と聞かされて育ちました。妻も同じようです。なので、うちでは子ども達にも同じように言い聞かせています。

また、悪霊や鬼を呼び寄せてしまうから、人さらいが来るから、親が早死にするから、などなど他にもいろんな説があるようですね。

ですが、昔は口笛は「嘯き」と呼ばれていました。そして、「うそ」とは神聖な行為だったのです。

つまり、神聖な行為だからこそ軽々しく口笛を吹いてはいけない、特に夜は日の境目。精霊も活動するとき、というわけです。

お彼岸は日本独自の文化

インドから伝わった仏教の文化ではないのです。

その起源は崇道天皇に由来しています。崇道天皇は桓武天皇の弟である早良親王のことで、死後に与えられた天皇の名です。

早良親王は桓武天皇の部下であった藤原種継を暗殺したという無実の罪を着せられて幽閉されます。その後、島流しにされることとなりましたが、途中で幽閉中からの抗議の断食により餓死してしまいました。

その後、桓武天皇の周辺の人々が立て続けに亡くなり、さらに都で飢饉や疫病が流行しました。完全に「早良親王の祟りじゃ!!!」と考えたことでしょう。建造途中の長岡京から平安京に遷都することととしました。風水をガンガン利用し、神社で都を守りに守ったのです。

それではまだまだ不安だったのでしょう。早良親王に崇道天皇の称号をあたえて、「七日間お経を転読し続ける」という「お彼岸」を始めたのでした。

つまり、「崇道天皇の祟り」の恐怖にかられた桓武天皇が、祟りをしずめるための行事だったのです。

感想・まとめ

本書ではいろいろな日本の風習・迷信にまつわる諸説が紹介されていて、さらに著者独自の考察もあり、とても知的好奇心がそそられます。

今も当たり前に行っている行事や風習を読み解くことで、そのルーツに秘められた昔の人々の恐怖、思いを知ることができる、素晴らしいロマン!!

日本人として知っておきたい、日本人のルーツがそこにはあります。

ぜひ読んでみてください!

では!!

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